■ 経済ニュース ■

2002.01.28号

アルゼンチン経済危機によるメキシコへの危険はない、とアナリスト

フランクフルトの新聞は25日、メキシコはアルゼンチンから波及する悪影響による危険をうまく乗り切ることができるだろうとのアナリストの見解を発表し、投資家たちはメキシコ政府の安定化政策を信頼している、と強調した。同紙によるとラテンアメリカ経済専門家たちはアルゼンチンの財政危機はメキシコに打撃を与えるというよりもむしろ良い影響を及ぼしたとしている。「投資家たちは数十億ドルの単位で南米から資金を引き上げ、それをメキシコやその他の安全な国に投下している」と強調した。メキシコ投資基金のスポークスマンによれば、メキシコに対する好評価は政府の財政統制と、安定化を目指した中央銀行の通貨政策によるものである。それは国内総生産の0.65パーセントという低い財政赤字率と、1968年以来最低の4.4パーセントというインフレ率に反映されている、と述べた。メキシコ投資基金も述べるとおり、北米に属するメキシコは、ヨーロッパやアフリカと同じ位地理的に離れているアルゼンチンとはほとんど交易関係も金融関係も持っていない。「北米自由貿易協定(NAFTA)加入以来、メキシコは他のラテンアメリカ諸国から離れ、それが現在では利点となっている。しかし、交易がほとんど唯一の国(米国)とのあいだに限られていることもまた、危険である」と警告もしている。El Economista (2002/01/25)

フォックス大統領、民衆銀行支援策を発表

フォックス大統領は22日、民衆銀行の強化のための新しい戦略を発表した。特に、プログレサとプロカンポの両銀行にかわる「コンティーゴ(あなたと共に、の意)」計画により政府補助金の支払の実現を行うもの。ロスピノスの大統領府でフォックス大統領は、午前中に行われたセレモニーで調印されたいくつかの合意をもとに、社会政策の変更を発表した。民衆銀行が機会創出を目指すものであるのに対し、新しい「コンティーゴ」計画は、民衆の能力開発を目指すものである、と述べた。また、国民貯蓄とファイナンシャルサービスのための銀行設立を発表した。2010年にはこの銀行が1200万近い個人と家族に融資を行っていると推定され、取り扱われる貯蓄額は年率20パーセントの割合で増加するだろう、と述べた。El Norte (2002/01/22)


2002.01.21号

JPモルガンがメキシコの経済早期回復を予測

JPモルガンが発表した2002年のラテンアメリカ経済見通しによると、メキシコは同地域内でもっとも早く不況から立ち直るだろうと分析されている。

この分析を詳細に記した報告によれば、JPモルガンはメキシコ経済が底打ちとなるのは2月か3月で、このため2002年の第1四半期の国内総生産は実質的に成長しない見込み。経済回復は2002年の下半期に入るより前に始まるが、アルゼンチン経済の動向と、それによって影響を受けるブラジルとチリの経済の動向に左右されるだろうとされている。特に、メキシコの不況は通貨切り下げもインフレ昂進も伴っていないということを指摘している。JPモルガンはショックは深刻だったものの、経常収支赤字は
2000年の国内総生産の3.2パーセントから2001年には3.1パーセントに減少し、外国直接投資は同じく国民総生産の4.5パーセントに増加している。Notimex (2002/1/17), El Universal Online (2002/01/17)

メキシコ外国直接投資呼び込みで2001年第一位-ラテンアメリカ・カリブ経済委員会

ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)によると、メキシコは2001年のラテンアメリカ諸国の中でもっとも多く外国直接投資を受け入れた国となった。ECLACの行政顧問オカンポ氏によると、メキシコのパフォーマンスが飛び抜けているのは、他のラテンアメリカ地域では北米自由貿易協定(NAFTA)関連の経済活動が行われていないからだ。さらに、メキシコの輸出が大幅に増えたのもまた外国直接投資の増加と密接に関係していると付け足した。2001年の外国直接投資の多さでメキシコに続くのはブラジル、アルゼンチン、ベネズエラ、ペルー、チリ、ドミニカ共和国、の順。しかし2001年についてはバナメックスとシティグループの合併があったため、この取引額を差し引くと、メキシコへの直接投資は約半分となり、ブラジルについでラ米第二位となる。El Economista (2002/01/18)

メキシコのコーヒー輸出、2001年12月に20パーセント増加

メキシココーヒー協会は、2001年12月のメキシコのコーヒー輸出額は、2000年の同じ月と比べ20パーセントの増加となった、と発表した。しかしメキシコのコーヒー産業は世界不況によって打撃を受けており、生産者によると生産コストが所得を上回っている。Reuters (2002/01/14)

DJ-ADR:メキシコ国債格上げを好感し上昇

NY(ダウ・ジョーンズ)15日のADR(米国預託証券)市場は、フィッチがメキシコ国債の格付けを引き上げたことで、ラテンアメリカ銘柄が上昇。アルゼンチン危機のさなか新興市場は敬遠され気味だったのが、メキシコ国債格上げのニュースは韓国、中国、台湾などにとってもポジティブだという声が聞かれた。ニューヨーク銀行ADR指数は前日比0.62%高の96.69。

メキシコの携帯電話会社、セルラー・アメリカ・モビルは6.5%高、親会社のテレメックスは1.8%高。ただし、アルゼンチン銘柄は、ペレス・コンパンクが0.9%高とはなったものの、多くが続落。通信のテレコム・アルヘンティーナは1.7%安、金融のグルポ・フィナンシエロ・ガリシア(GGAL)は8.1%安。(ダウ・ジョーンズ)時事通信[1月16日]


2002.01.14号

2001年、1968年以来最低のインフレ率を実現-中央銀行発表

メキシコ中央銀行の発表によると、メキシコが2001年に実現した4.4パーセントというインフレ率は、消費者物価指数の計測が開始された1968年以来最低の水準であった。公式予測のインフレ率を下回る結果となったのは2001年で3年目。2001年の予測は6.5パーセントであったのに対し4.4パーセント、2000年は10パーセントとの予測に対し、8.96パーセント、1999年は13パーセントの予測に対し12.32パーセントだった。なお、12月の全国消費者物価指数は0.14パーセントにとどまった。2001年のインフレ率は2002年の予測(4.5パーセント)すら下回っているが、中央銀行は2002年のインフレ予測と下は同じ水準を維持している。Reforma, Ciudad de Mexico (ene 9, 2002)

ペメックスが2000人規模の人員整理を予告

メキシコの国営独占企業、メキシコ石油公社(ペメックス)は、2002年に2000人規模の人員削減を行う方針を明らかにした。退職プログラムを通じて行う。ペメックスのスポークスマンは、ペメックスの強大な労働組合に属する組合員以外で、同社で25年以上勤務した労働者に対し、退職プログラムまたは自主退社プログラムを通じて人員削減を行うとしている。ペメックスは現在13万7千人の労働者を雇用しており、今回の人員削減はごく小規模なものだが、この国営企業の経営不振を物語っている。Notimex (ene 9, 2002)


2002.01.07号

政府が両替時のペソドル交換比率一律化を検討

メキシコ政府は全国の両替所と金融機関に対し、ペソドル交換比率に一定の基準を設けるための会合をもつことを予定している。統一された換算レートで移民労働者の利益を上げようとするもので、移民労働者からの送金は年間90億ドルにのぼり、現在は実質22パーセントが送金手数料として徴収されている。米国で働くメキシコ人労働者の送金は、石油と観光についでメキシコの収入の第3番目を占める。政府はまた、送金を請け負っている最大の銀行、ウェスタン・ユニオン銀行に対しても、送金手数料を下げるように要求する。現在の送金手数料は300ドルあたり20ドルとなっている。 La Jornada, Ciudad de Mexico (dic 24, 2001)

最低賃金を平均5.78%引き上げ

国家最低賃金委員会は12月27日、2002年の最低賃金を平均5.78%引き上げると発表した。A地域では4.5%増で42.15ペソ/日、B地域では5.7%増で40.10ペソ/日、C地域では6.9%増で38.80ペソ/日となる。C地域がメキシコ国土の96%を占める地域である。雇用側代表はB地域とC地域の名目引き上げ率が2002年のインフレ予想を上回っていることを指摘し、インフレ率の上昇、ひいては実質賃金の低下と失業につながるとして反対した。La Jornada, Ciudad de Mexico (dic 28, 2001)

4家族に1家族の構成員一人が2001年中に失業

アルダンシン・イ・アソシアードス社が11月末に行い、エル・ウニベルサル紙に公表したアンケート調査によると、メキシコの家庭の23.3%が家族の中に失業した人がいると答え、メキシコの4家族に1家族が、家族の一人が2001年中に失業したという結果が明らかになった。メキシコからの輸出の85%をしめる米国経済の低迷により、メキシコの2001年の経済成長率は0.26%となり、公式統計によると1月から10月までの間に20万以上のフォーマル雇用が失われた。また、民間の調査によると、8月までに40万以上の雇用が失われたとされている。また、同じ調査の結果メキシコの家庭の73%が2001年中に貯金をできなかったとしている。REUTERS (dic 31, 2001)

石油輸出額の減少がメキシコの総輸出額を直撃

工業製品と石油の輸出額の減少によって、11月の輸出総額は昨年の同月と比べて15.1%減少し、同じ月の減少額としては1986年以来の高い率となった。財務省とINEGI(国立地理統計機関)によると、11月の輸入額も11.1%減少した。部門別では、工業製品の輸出減は12.1%、石油関連の輸出減は42.7%となっている。 El Norte, Monterrey (dic 27, 2001)

トヨタがメキシコに初の工場建設

トヨタ自動車の子会社である北米トヨタ自動車が、メキシコ国境のティファナに初の工場を建設すると発表した。2004年の稼働を目指している。(時事通信、2002年1月5日)

チコンテペック油田の開発調査権を日本が獲得した、という報道は虚偽であるとペメックス

メキシコ石油公社ペメックスは声明を発表し、日本の石油公団がベラクルス州・チコンテペック油田の単独開発調査権を獲得したという報道は間違いであると述べた。メキシコ国内法によって石油の開発はペメックスを通じて国家が行う排他的活動分野であり、読売新聞に掲載された情報は正当な情報源を持たず虚偽の報道であるとした。そのような権限を与えたとしたら、27条で石油に関する条項を定めているメキシコ共和国憲法に違反することになる、とも述べた。また、現行憲法の枠内で、国内直接投資を増やす努力はしているが、原油の開発に関してはいっさいの契約を結ぶつもりはないとした。La Jornada, Ciudad de Mexico (ene 3, 2002)

参考:メキシコ・チコンテペック油田の開発調査権、日本が獲得-読売新聞

政府筋は31日、世界最大級の埋蔵量を持つメキシコの「チコンテペック油田群」の開発調査権を日本が単独で獲得したことを明らかにした。1月中にも発表する。油田開発では、原油探査などの開発調査権を取得したところが採掘権を獲得するケースが多く、少なくとも全体の3割の採掘権を日本が得る可能性が高い。そうなれば、日本の原油総輸入量の約15%にあたる日量70万バレル程度が確保できることになる。日本にとって過去最大の石油開発プロジェクトとなり、原油の安定供給確保に役立つと期待される。また、中東への依存度が高い原油調達先の多様化を図ることができ、エネルギー安全保障の観点からも大きな意義を持つ。

「チコンテペック油田群」は、メキシコ湾沿岸に広がる陸上油田で、メキシコ政府の調査などによると、埋蔵量は、現在世界最大のサウジアラビアのガワール油田(埋蔵量約660億バレル)を上回る700億バレル程度と見込まれる。

メキシコが原油・天然ガスの開発を外資に開放するのは初めてとなる。メキシコはこれまで、国内の原油や天然ガス開発は国内企業に限る政策をとってきたが、工業化で石油、天然ガスへの国内需要が増大しているため、2001年に外資を活用して開発に乗り出す方針に転じた。これを受けて、日本の石油公団のほか、エクソンモービルなど国際石油資本(メジャー)も参画にしのぎを削っていた。

関係筋によると、欧米メジャー各社は、米同時テロを機に中東以外での新たな利権確保を急ぐためメキシコ政府に対し開発を全面的に任せるよう要請。しかし、メジャーに権益を独占されることなどを嫌うメキシコ政府は昨年12月、メジャー並みの石油探査能力を持つ日本の石油公団に探査の共同実施を要請した。

石油公団は今年から年間20億円前後をかけて調査を始め、5年後に生産に向けた準備に入る。商業生産移行後の生産量は、日量200万バレルを想定している。

これまでの油田開発の例などによれば、日本は3〜5割の採掘権を手にすることができる見通しで、仮に5割の採掘権を得た場合には、現在、日本にとって最大の輸入先であるアラブ首長国連邦(UAE)からの輸入量108万バレルに、ほぼ匹敵する量を確保できることになる。石油公団は特殊法人改革で金属鉱業事業団に統合されることが決まったが、統合後は引き続き同事業団が開発調査を継続する予定だ。(読売新聞、2002年1月1日)