一期一会 テポストラン編 (1)

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3度の旅のうち、毎回訪れたのがテポストラン村。切り立った山の山肌の色は一日を通して人々の目を楽しませてくれます。どういうことかというと、太陽の昇降によって作り出される山の凹凸の影が刻一刻と変化していき、また山肌の色もそれに合わせてクリーム色やピンクへと変化していくのです。雨季には滝ができるそうです。テポストランの人々はそんな景色を毎日見ながら暮らしているのですね。うらやましい。

3度のうち初めの2度は、その切り立った山の頂上にあるピラミッドに上りました。これがまた険しい!往復約2時間の登山ですが、足場も悪く、いっこうに目的地にたどり着けないのです。水は必ず持っていくことをお勧めします。頂上にあるピラミッドは登ることもでき、そこから見渡す眺めは壮快です。登山者には外国人も多く、メキシコ人も負けじと多かったように思います。

今回はその1度目の登山のことをお話しましょう。
とにかく一番驚いたのは、老若男女関係なくそれぞれのペースで登山を楽しんでいたことでした。私が覚えている中で一番高齢の方は70歳くらいのおじいさんでしたでしょうか。「わしはまだまだスキーだってするんじゃ」と、ゆっくりゆっくり登っていました。子どもはやはり元気で、走るように登る子もいれば、自分が高いところにいるということに急に気がついたのか、怖くて泣き出す子どもも。残念ながら、当時スペイン語はほとんど話せなく、もともと引っ込み思案な性格(と自分では思っているんだけれど、誰も頷いてくれない)なので、声をかけたりできなかったのが悔やまれます。それでも登山のルールは日本と同じ。負い越すときやすれ違うときには一声かけたりしていました。

もう一つ驚いたことは、テポストラン村には犬が非常に多いこと。それも、ビッグサイズ!登山を始めたときにも、一匹の黒い犬が後からついてきて、頂上まではついてきませんでしたが、かなりのところまで一緒に登った記憶があります。初めはなんだか(人間のほうが犬を)警戒していたのですが、最終的には情が移ってしまい、犬を気にしながら登山をしていました。テポストランでの一番大きな出会いだったかも。

山の麓にはメルカドが広がり、大きな教会もあります。クエルナバカのカテドラル同様、テポストランのこの教会は私の大好きなところの一つです。教会の入口に大きな門があり、そこには伝統的な人々の生活が描かれていて、教会内部の装飾も花や葉っぱなどの彫刻が多く、ヨーロッパの教会のような華やかさはありませんが、素朴で暖かな雰囲気と、民族の結束力というか、プライドを感じます。どうも私はそこに惹かれるようなのです。メキシコを旅していると、いたるところで“original”という言葉と出会います。それは、もともとの原住民の暮らしと、スペインによる征服の影響のなかで、彼らが彼らなりのアイデンティティを守り通した証なんだと思うからです。

次回は2度目の登山での一期一会を紹介します。

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