一期一会 タクシー編 (1)

(1)テオパンソルコ行き

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テオパンソルコのピラミデ。次にここを訪れるときは歴史の勉強してから行こうと思います。
常春の街クエルナバカは美しい花々にあふれ、穏やかな空気が流れています。そんな街の高級住宅街の中に、小さいけれど保存状態のよいピラミッドがあります。それがテオパンソルコのピラミデ。

私の通っていた語学学校には、クエルナバカの見所が書かれた地図が掲示してあったのですが、語学学校からさほど遠くないところにこのピラミッドはありました。「歩いて行けなくは無いけれど・・・ちょっと心配」ということで、ひとまずタクシーを捕まえて行くことに。このとき、私は10人くらいの日本人グループの中にいたので、3台くらいに分かれて乗ったような気がします。

まず一台をとめると、続いて二台がとまりました。私は一番最後のタクシーに乗ることになり、早速値段交渉に移ります。
「テオパンソルコのピラミデまで行きたいんだけど、いくらで行けます?」
同じ会話が3台のタクシーそれぞれで行なわれていました。最初に止めたタクシーでは交渉が成立したようで、さっさと出発していってしまいました。初めて自分たちで止めて乗るタクシーだったので、“メキシコではタクシーに気をつけろ”と言うガイドブックの言葉が頭をよぎり、私がちょっと不安になってきたころ、もう一台のタクシーでも交渉が成立。タクシーに乗りこむ友達にすかさず「いくらで行ってくれるって?」と聞くと「20ペソ」と返事が来ました。
運転手と話していた友達が言うには、私の乗るはずのタクシーはその倍近い値段を言われていたようで、「あのタクシーは20ペソで行けるって言ってるんだけど・・・」と攻撃。
運転手もしぶしぶその値段で了解してくれました。

さて、一路テオパンソルコのピラミデへ。
途中、先に行っていたタクシーと一緒になりました。すると、どうでしょう!スピードがぐんと上がり、二台でカーチェイスが始まったのです。クエルナバカは坂道が多く、道路の状態も全部が良好とは言えません。スピードの出た車でそこを走ったら、時にはジャンプだってしてしまいます。私たちはびっくりしてても、それがちょっと楽しくてきゃあきゃあ騒ぐので、運転手さんもご機嫌の様子。あっという間に目的地に到着しました。

テオパンソルコのピラミデには私たち以外に人はなく、ゆっくりと見ることが出来ました。ピラミッドの上で、そこから見えるクエルナバカの街を見ながら、このピラミッドが栄えていた頃の時代を思いました。その時、ここからどんな景色が見えたのでしょうか?
クエルナバカはもともと“クアウナワク(森の入口)”という名前で、エルナン・コルテスによる征服後、現在の“クエルナバカ(角、牛というスペイン語)”に変化したようです。
長い時を経て、決して出会うことの無い、昔ここで生きた人々と同じ場所を共有する不思議。彼らとここから見える景色を共有できなくても、確かにこの土の上で、この石の上で歴史が流れてきたのだと思うと、何となく「ありがとう」と言いたくなってしまうのは、私だけでしょうか?

帰りは地図を頼りに(いつもなら地図さえ見ないで、適当に歩くのですが)、途中寄り道をしながら歩いて帰りました。私は初めての道の、ちょっと不安でちょっとどきどきする、そんなくすぐったい空気が好きです。それをゆっくり感じられるから、歩くのが好きです。(例え迷っても、車ほど遠くに行ってしまわないし)そして、意外な道に通じているのを発見すると、秘密を見つけたような気分で嬉しくなってしまいます。これも一つの“出会い”でしょうか?

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