エムカとの日々−序章(番外編)−

 犬を飼う。

 これは、私が子供の頃からずっと思い憧れていたことであった。父が新聞記者だったので、転勤が多く、子供時代にこの夢が叶えられることはなかった。それが、こんな思いがけないカタチで実現できるとは。しかもここメキシコで。

 いやいや、みなさん世の中捨てたもんじゃありませんぜ。一人暮らしならともかく、私は半年前からアビラ家に居候の身。ましてや家族が犬好きではないことを知らされていたのに、である。

 「エムカだよ。」 とカルラが言った

 ぺぺがすかさず、

 「それは、おまえが勝手に付けた名前だろ。オトカに好きな名前を付けさせろよ。」

 「だってエムカだもん。名前も一緒にプレゼントしたんだもん。」

 哀しそうに答える彼女はまるで駄々っ子のようだ。

 正直なところ、何だかヘンチクリンな名前だと思ったが、私はカルラの思いを尊重することにした。

 エムカ。聞きなれれば結構カワイイ名前かも、なんて今は思ったりしている。飼い主は、モリワキオトカ。

 “MORIWAKIのM(エム)とオトカのカ”なんて馬鹿げた共通点を見つけては、ニンマリとする今日この頃。気分はすっかり母親なのである。

 ところ、最近のエムカは、食意地がはっている上にひどく狂暴。近所のおばさんに取り入って、よくお昼ご飯をご馳走になっているらしい。困ったもんだ。母親はこんなに奥ゆかしいというのに。ホント子育てって難しいわぁ。

注:この番外編はメキシコ滞在中に書きました。詳しくは年表を。

  


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