■■ ヒスパニックパワー炸裂 全米で移民法案に抗議デモ ■■

去る5月1日に全米各地で大規模な移民法案に反対するヒスパニックのデモが行われた。これだけ大きなうねりになった背景はいったい何かを考えてみたい。

今や、全米の不法移民数は1100万人と言われているが、その大半が中南米出身のヒスパニックであることは日本人も気付き始めている。ワシントンにある全米ヒスパニックの調査機関Pew Hispanic Centerによれば、不法移民の出身国別の割合は中南米だけでほぼ8割、その中で何とメキシコ人が60%近いという事実がある。

なぜか?理由は簡単。それはメキシコと米国が陸続きだからである。米墨国境は2000マイル(3200キロ)ある。メヒコと国境を接するアメリカの州は、西からカリフォルニア、アリゾナ、ニューメキシコ、テキサス州の4州である。昨年末には米国連邦下院で、メキシコとの国境沿いに1000キロ以上にわたるフェンスを設置することが可決されている。不法移民は刑事法上の重罪となり、雇用主も罰せられるという不法移民取り締まり法案である。

この数年では、カリフォルニアやテキサス州が国境警備を強化した関係で、隣の砂漠が広がるアリゾナ州への不法入国者が増えたようだ。年間200万人ともいわれるメキシコからの不法移民は、気温40度を超えるこの砂漠地帯などを歩いて越境するわけだ。しかし、途中で道に迷って命を落としたり、不法越境の請負人である「コヨーテ」と呼ばれる者達に殺されることもある。

どうしてそんなにしてまでもアメリカに渡るのか?米墨間の経済格差があまりに著しいからだ。メキシコで地方の住む人達には仕事がない。米国に行けばつらい仕事でも職にありつけ、生活の糧を得ることが保証される。しっかりためて家族に送金できる。

日本でもラーメンチェーン店などに行くと、汗水たらしてテキパキ働いているのは大抵中国人の若者が多い。彼らは自分の学費を稼いだり、親に送金したりするため必死で長時間労働に耐えるのだ。貧しさがパワーの源になっている。

このアメリカ移民問題は、日本人にも対岸の火事ととらえてはいけない。ベビーブーマーが定年退職を迎え若年労働力不足の米国と同様、少子高齢化の日本も米国のような問題を抱えないという保証はない。