第9回

アサード(焼き肉)

 4月のウルグアイ、夏はぎゅうぎゅうに溢れかえっていたビーチも人気がなくなり、すっかり秋が深まりつつあります。ビーチで日光浴していたあの沢山のウルグアイ人はどこへ行くのだろうか・・・と思っていたら、ショッピングセンターや映画館でした。

 私は、夏も冬も関係なく、毎週末、天気が良い日は馬を習いに行きます。・・・といっても優雅な英国式乗馬ではなく、ワイルドなガウチョ式。「ガウチョ」とは、ウルグアイやアルゼンチンに広がる大草原パンパの牧童、いわゆる「カウボーイ」です。ガウチョの説明は、また次回にでも譲るとして、今回は、先週末に馬の先生(アルフレードさん)が別の生徒の送別会と称してアサード(焼き肉)をしてくれたので、ウルグアイの「アサード(焼き肉)」について取り上げたいと思います。

いつもお世話になっている馬たち(水を飲んでいるところ)

 アサード(asado)とは、マテ茶と同じくガウチョがもたらしたウルグアイとアルゼンチンを代表する食文化。もともとは野生牛を捕獲して牛皮を売ることを生業としていた(16〜18世紀)ガウチョが仕事の途中、屠殺した牛の肉を野原で焼いて食べたことから始まりました。現在では、都市に暮らすウルグアイ人も、老若男女、週末は家族や友人が集まり団欒アサード、クリスマスなどの祝日や誕生日となればお祝いアサード、まさにウルグアイ国民350万人総アサード人口といっても過言ではありません。もちろん、家庭パーティーだけでなく、町中には焼き肉屋(パリジャーダ)があり、365日、モンテビデオの街は肉を焼く煙がもくもく・・・というのは言い過ぎですが、海に開かれた平地の街で、人口密度の少ないから特別に問題ないものの、これが盆地のメキシコシティだったら・・といつも思います。ちなみに、一軒家だけでなく、ちょっとしたマンションにもアサードを行うためのパリージャ(グリル)が備え付けとなっています(ウルグアイには防火のための規制なさそう・・)。私のマンションは狭いので備えつけられてませんが、共有で利用できるサロンがあり、そこには立派な焼き肉グリルががあります。

 さて、このアサード、英訳するとバーベキューですが、米国でいうバーベキューよりも、もっとワイルド。網にのせた牛肉を炭火でじっくり焼くので調理の時間は1〜2時間ぐらいはかかります。この間に余分な油が抜けきるので肉もかなりヘルシーな状態となります。しかし、通常は「チョリソ」や「モルシージャ」といった腸詰めや「チョット」等という変な名前のついた臓物のバーベキューを「つきだし」(ピカーダ)として食べるので、日本人の私は本番の牛肉の焼き肉が出てきた頃にはお腹がいっぱいとなっており、なかなか思うように食べれないです。ちなみに、ホームパーティーのアサードには、「鍋奉行」ならぬアサード奉行(アサデーロ)がいて(普通はお父さん)、火加減や肉の状態をコントロールしています。

 今回、馬の先生のところで食べさせてもらったのは、土の上に火をおこしての即席アサード。田舎のガウチョ方式です。ガウチョの人は、たいてい腰の背中に万能ナイフを携帯(牧場の仕事に必要)しているのですが、アサードの時は、このナイフが包丁、そしてナイフに早変わりしてました。

これから焼きます!

網のとなりで木を燃やして・・・

できた木炭(スペイン語で「ブラサ」)を肉の下に引き熱します。

火加減のチェックや木炭の補充はぬかりなく!

火で暖めながら炭火でじっくり・・・

できあがりました!

おいしそうだワン!

 (おわり)


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