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■■ 中南米:映画に描かれた軍政時代 ■■
◆戒厳令
原題
ETAT DE SIEGE
製作
1973年/フランス=イタリア
監督 コンスタンチン・コスタ=ガブラス
出演 ジャック・レモン/シシー・スペイセク/ジョン・シェア
内容 ドラマ/実話もの
中南米で反帝反米の傾向が高まりはじめた1970年。南米某国でひとりのアメリカ人が革命派によって誘拐される。政府は戒厳令を発動し、街は恐怖と混乱の地と化す。事件を追うジャーナリストはその人物が米政府から極秘の任務を受けていた事を突き止めるが……。政治サスペンス映画の巨匠、 コスタ・ガブラス監督が世に問う体制への告発 。
メモ 1970年にウルグアイで実際に起こった『イタリア系アメリカ人ダン・アンソニー・ミトリオン誘拐殺人事件』 の映画化。当時の、ウルグアイは、 アメリカ資本と一握りの銀行、大地主、大教会による寡頭制に国民は苦しんでおり、特に経済危機が深刻化してから国民の不満は高まり、 中間層の急進化がこれに対する政府の弾圧とあいまって、 極左的武装集団 "ツパマロス"が誕生していた。 この誘拐事件はアメリカの傀儡に等しい政府が「非常保安措置」令を公布し、 一切の民主主義的な権利を停し、全土が戒厳令状態の時に起こった。

◆サンチャゴに雨が降る
原題
IL PLEUT SUR SANTIAGO
製作
1975/フランス=ブルガリア
監督 エルヴィオ・ソト
出演 ジャン=ルイ・トランティニャン/ローラン・テルジェフ/アニー・ジラルド/ビビ・アンデルセン/ベルナール・フレッソン
内容 ドラマ
南米チリの軍事クーデターを事実に基づいて描いた、ドキュメンタリー・タッチのドラマ。俳優を見せるのではなく、事件そのものを語る手堅い演出が、重厚な印象を与える。
メモ ビデオ:別題「特攻要塞都市」
A・ピアソラの美しいメロディが惨劇を際立たせる。

◆ミッシング
原題
MISSING
製作
1982年/米
監督 コンスタンチン・コスタ・ガブラス
出演 ジャック・レモン/シシー・スペイセク/ジョン・シェア
内容 ドラマ/実話もの
舞台は南米チリ。軍事クーデターが勃発した1973年9月に実際に起きたアメリカ青年ジャーナリストの失踪事件を基に描いたサスペンス・ドラマ。父と息子の妻による現地での必死の捜索活動を通して権力犯罪を描く。
メモ 撮影は、ピノチェト政権下のチリでは行なえなかったため、メキシコシティでロケされた。
コスタ・ガブラス監督(1933年ギリシャ・アテネ生まれ)は、69年ギリシャで実際に起こった左翼政党の政治家暗殺事件をヒントに、 ギリシャにおけるファシズムの急進を告発したサスペンス映画『Z』 (アカデミー賞外国映画賞・カンヌ国際映画祭審査員特別賞) で一躍世界的な鬼才監督となる。 更に70年にはチェコのスターリニズムを暴露した『告白』を手掛け、 73年『戒厳令』ではラテン・アメリカ(中南米) に対するアメリカ帝国主義の黒い手(陰謀)を痛烈に暴き出し政治サスペンス映画の巨匠と呼ばれる。

◆オフィシャル・ストーリー
原題
LA HISTORIA OFICIAL
製作
1985/アルゼンチン
監督 ルイス・プエンソ
出演 ノルマ・アレアンドロ/エクトル・アルテリオ/ウーゴ・アラーナ
内容 ドラマ/実話もの
1983年、軍事政権下のアルゼンチン。ある夫婦が養子縁組によって育てている子供の出生の秘密に疑問を持ち、調査を進めていく。やがて明らかになるのは、軍部による思想犯抹殺の恐るべき実態だった……。実話を基に描かれた迫真の社会告発映画であると同時に、親子の強い愛情をも描いている。
メモ アカデミー外国語映画賞/カンヌ映画祭主演女優賞

◆戒厳令下チリ潜入記
原題 ACTA GENERAL DE CHILE
製作
1986/スペイン
監督 ミゲル・リティン
出演 チリの人々
内容 ドキュメンタリー
1985年初め、チリの映画監督ミゲル・リティンは、ピノチェト軍事政権に追われ祖国に帰ることを全面的に禁止された亡命者の一人でありながら秘密裏に母国に潜入、六週間にわたって軍政12年目のチリの現状を七〇〇〇メートル以上のフィルムに収めた。
メモ ガルシア・マルケスがリティン監督にインタヴューし、それを独白調のルポルタージュに再構成した本を執筆。岩波書店「戒厳令下チリ潜入記 ある映画監督の冒険 」(後藤政子/訳)

◆蜘蛛女のキス
原題
Kiss of the Spider Woman
製作
1985/米=ブラジル
監督 ヘクトール・バベンコ
出演 ウィリアム・ハート / ラウル・ジュリア / ソニア・ブラガ / ホセ・リュウゴイ
内容 ドラマ
舞台はファシズムが台頭する南米の某国。刑務所で同じ監房に入れられている対照的な二人の男、反体制運動の闘士バレンティンと、ホモセクシャルのモリーナ。最初、モリーナを毛嫌いしていたバレンティンだが、モリーナの話す映画の話を聞く内に、やがて二人は心の絆を深めるようになる……。
メモ 主演のウィリアム・ハート、本作アカデミー賞、カンヌ国際映画祭などで主演男優賞。
原作は78年に出版されベストセラーとなったアルゼンチン作家マヌエル・プイグの小説

◆サルバドル/遥かなる日々
原題
SALVADOR
製作
1986/米
監督 オリヴァー・ストーン
出演 ジェームズ・ウッズ/ジェームズ・ベルーシ/ジョン・サヴェージ/エルピディア・カリーロ/トニー・プラナ/マイケル・マーフィ
内容 ドラマ
フォト・ジャーナリストのボイルは、友人と2人で金を稼ぐ為、気軽な気持ちでエル・サルバドルへの旅に出た。ところが現地に入った彼らの目に映ったのは、“死の分隊”が統治する凄惨たる風景だった……。反逆者、不賛同者を容赦なく虐殺する“死の分隊”を操る残虐で抑圧的な政府への告発と、その政府を支援する合衆国に対して痛烈な疑問を投げかけている。
メモ 社会派映画監督オリバー・ストーンの作品群の中でも特にメッセージ色が濃く、悲しみに満ちた作品。

◆カルラの歌
原題
CARLA'S SONG
製作
1996/イギリス
監督 ケン・ローチ
出演 ロバート・カーライル/オヤンカ・カベサス/スコット・グレン/サルヴァドール・エスピノーザ/ルイーズ・グッドオール 
内容 ドラマ
舞台は1987年のスコットランド、グラスゴー。バスの運転手ジョージはニカラグア舞踏団の ダンサー、カルラと出会い恋に落ちる。しかし心を閉ざした彼女は実は故郷ニカラグアでの哀しい過去を引きずっていた。 過去を清算するため内戦下のニアラグアに戻るカルラ。彼女に同行したジョージがそこで見たのはニカラグアの悲惨な現実だった。 内戦と戦争によって背負った心の傷という重苦しいテーマを扱いながらも人間描写の優しい視点が光る佳作。
メモ ビデオ:別題「カルラの歌/戦士たちの鎮魂歌(レクイエム)」
監督はイギリスの労働者の生活を描きつづける社会派ケン・ロ−チ。
作品の中で心に傷を負っているカルラが口ずさんでいるのは、チリの《ヌエバ・カンシオ−ン=新しい歌》の旗手ビクトル・ハラが1973年軍事クーデターで殺害される直前に作った「宣言」

◆クアトロ・ディアス
原題 QUATRO DIAS "FORDAYS IN SEPTEMBER"
製作
1997/ブラジル
監督 ブルーノ・バレット
出演 アラン・アーキン/ペドロ・カルドーゾ/フェルナンダ・トーレス
内容 ドラマ/実話もの
1969年にブラジルで実際に起こった、学生グループによるアメリカ大使誘拐事件を映画化。1969年、軍事政権下のブラジル、リオ・デ・ジャネイロ。革命を夢見る学生のフェルナンドは、友人セザルの手引きで、反政府武装組織〈MR8〉に参加。女性リーダー、マリアの指導の下、若きメンバーたちはお互いに本名や身分を隠して革命活動にいそしむようになる。やがて彼らは、アメリカ大使エルブリックを誘拐し、彼の命と引き換えに15人の政治犯釈放を政府に要求。政府と彼らとの緊迫したにらみ合いが続くが…。
メモ 事件の当事者フェルナンド・ガベイラの自伝的小説「O que e isso, companheiro?」を映画化した社会派ドラマ